研究概要 |
西南日本の白亜紀-古第三紀珪長質火成活動は,南から北へ年代が若くなる傾向が認められる.これは活動域が時代と共に北に向かって移動したものか,あるいは活動域が山陰帯に時代と共に収束したものなのか,明確でなかった.そこで,本研究では山陰帯の火山岩類や花崗岩類について系統的な年代測定を行った.その結果,山陰帯にも85-70Maの火成岩が分布することが明らかとなり,85-70Maの火成活動は領家帯から山陰帯にかけて幅広く行われ,その後山陰帯のみに収束して行ったことが明らかとなった.この結果は100-80Ma時に海嶺の沈み込みがあり,幅広い活動を引きお越し,その後沈み込むスラブの温度低下によって,古第三紀以降の活動は通常の沈み込み帯と同様な活動になったものと考えられる.この成果は,論文にまとめ現在地質学雑誌に投稿中である. また,本研究では西南日本の珪長質火成岩類に認められる地球化学的広域変化の要因についても検討を行った.領家・山陽南部の火成岩類は塩基性・酸性を問わず,Sr同位体初生値が高く,Nd同位体初生値が低い.一方山陰帯の白亜紀火成岩類はいずれもSr同位体初生値が低く,Nd同位体初生値が高い.このような両地域における地球化学的性質の相違はそれぞれのマグマソース自身に地球化学的相違があったものと考えられる.当時の領家帯や山陽帯南部の深部地殻やマントルはenrichした性格を持っており,小大陸片が存在した可能性が高い.一方山陰帯の深部は,depleteした地殻下部およびマントルから構成されていた.山陰帯では,45Ma以降,花崗岩類はさらにdepleteした性格を示すことから,45Ma以降山陰下のマントルにdepleteした物質が注入し,その影響で下部地殻がさらにdepleteしたものと判断される.この成果は2003年のハットンシンポジウムで発表し,現在論文化を進めているところである.
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