研究概要 |
オーストラリア東部の南部ニューイングランド褶曲帯,Peel-Manning Fault Systemに沿った蛇紋岩メランジには,様々なテクトニックブロックが含まれる。Pigna Barney地域の変閃緑岩は,ボニナイト的な化学的性質で特徴づけられる。この岩石のSm-Ndアイソクロン年代は536Maを,Rb-Srアイソクロン年代は426Maを示す。前者の年代は,閃緑岩の定置した年代を,後者は何らかの変成年代を表しているものと考えられる。この蛇紋岩帯には,上述のテクトニックブロックの他に,異なった地球化学的性格を有する多様な岩石が存在する。本研究結果により以下のテクトニックイベントが想定される。(1)約535Ma頃の未成熟島弧の火成活動とサブダクションイベント,(2)480Ma頃の島弧火成活動とサブダクションイベント,さらに,(3)420Ma頃の島弧的性格を有するマグマの活動。3回のどのイベントもゴンドワナ大陸東縁部の島弧-海溝系をイメージさせるものであり,現在の西太平洋のような多重な島弧-海溝系が周期的に発達していたと考えられる。 一方,西南日本外帯の黒瀬川帯は,古生代ゴンドワナ大陸東縁部から横ずれ断層により,延々現在の日本列島に合体し形成された構造帯であると考えられている。しかしながら,その帰属に関しては現在まで十分な証拠がそろっているとはいえない。本研究では,黒瀬川帯と,ニューイングランド褶曲帯の蛇紋岩ゾーンに含まれるテクトニックブロックの岩石学的・地球化学的性質の比較検討を試みた。研究期間中には,現地調査および岩石記載を行った。調査の結果,黒瀬川帯の蛇紋岩ゾーンには,ニューイングランド褶曲帯に出現する岩石に似た,変玄武岩や変ハンレイ岩,ザクロ石角閃岩など多様なテクトニックブロックが存在することが明らかとなった。
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