研究概要 |
平成15年度にはデータの収集とコア試料の分析を行なった. 1.データ収集 DSDPおよびODPのInitial ReportsとScientific Resultsに掲載されたコアの密度,堆積速度,年代,化学成分,酸素・炭素・Sr同位体比に関する項目をデータベースに入力した.入力したデータをもとに50万年間隔で平均値を計算し,それぞれのコア毎に炭酸塩平均堆積速度を求めた.この結果得られた海洋の堆積速度と以前の研究者によって得られた大陸棚での堆積速度を足し合わせ,全地球炭酸塩堆積速度の変化を推定した.全地球炭酸塩堆積速度は,白亜紀に速度が速く,古第三紀に遅く,新第三紀に再び速くなったことが判明した.ストロンチウム同位体比を境界条件として物質循環モデルを解いたところ,炭酸塩の堆積に対して白亜紀には火山活動の貢献が大きいことが,新第三紀にはヒマラヤ・チベット地域上昇の貢献が大きいことが判明した. 2.コア試料の分析 大西洋アフリカ沖で掘削されたODP Leg159 Site959Dの化学成分を強熱減量法,アルカリ抽出法,XRD法,XRF法を用いて炭酸塩,有機物,生物源シリカ,それ以外のSiなどの量を分析した.平成14度に得られた分析結果を基にさらに細かい時間間隔で分析する必要が認められた層準,岩相変化の大きな層準,白亜紀/第三紀境界などのように重要な出来事があったと思われる境界付近でより多くの試料を分析した.その結果,この海域の炭素循環は全地球炭酸塩堆積速度の平均的な挙動と大きく異なることが判明した.これは,堆積盆が北上したことと,時間の経過と共に沈降していったことに由来するものと考えられる.
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