研究概要 |
シルル紀の島弧陸棚生物礁を代表する日本列島のシルル系炭酸塩岩の岩相層序と含有化石状況を野外調査して,採取試料をもとにした内部構造と古生物相の検討を行い,島弧陸棚(島棚)としての堆積環境,古生物群集の構成,生物礁の枠組み構造などの復元を行った。また,全世界のシルル紀生物礁の網羅し検討対象と比較した。その結果,以下の点が明らかとなった。 1.南部北上帯シルル紀炭酸塩岩は,黒色石灰岩とその上位の白色石灰岩角礫岩からなる。これは不安定な島棚で泥質〜砂質浅海底での堆積,生物礁マウンドの形成,その後の崩壊という過程を経て形成されたと推定される。 2.黒瀬川帯シルル紀炭酸塩岩は,黒色石灰岩とその上位の白色石灰岩角礫岩からなり,これは陸棚泥低での生物マウンド構築とその後の崩壊過程で形成されたと推定される。 3.南部北上帯と黒瀬川帯の炭酸塩岩は,年代と含有化石内容に違いはあるものの,両者の形成環境と形成過程は類似しており,同類の島棚環境で形成されたと推定される。 4.南部北上帯と黒瀬川帯のシルル紀炭酸塩岩にみられる赤色〜黄色化や角礫状は,古カルスト化作用を示唆し、生物礁形成後崩壊前の段階における当時の海水準変動に一部起因するものみられる。 5.検討した島棚型シルル紀生物礁の古生物群集は、多様な骨格生物から構成されており,同時代の氾世界的な傾向に合致する。 6.復元されたシルル紀生物礁マウンドは,これまで推定されてきた大型骨格動物類ではなく,紅藻類と微生物類がその主体を担っている。 7.島棚型の生物礁の内部構造は,大陸棚型のそれらに較べると,一般に微生物類の被覆・連結や空隙充填による密度が高く,より堅固な枠組み構造を有していた可能性がある。 8.シルル紀炭酸塩岩の微相画像を収集し,CDに収録した。これは日本最古期の炭酸塩岩や化石内容を示す資料として,今後の研究材料や教育資料としてのアーカイブ的価値がある。
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