研究概要 |
本研究では最初に西大西洋〜インド洋の深海底コアに含まれる石灰質ナンノ化石を調査し,中新世中期の西黒沢期後期に太平洋とインド洋の流通が遮断されたことを明らかにした.この事実は,それを境にした海洋構造の変化を示唆している.一方,本邦の上部新生界の石灰質ナンノ化石群集調査結果は,新潟地域の基本構造,および第四系の分布から推定した秋田地域の基本構造いずれも,NW-SEの横ずれを伴いながらNE-SWのトレンドをもつ堆積盆地であることを示す.このことは,中新世における日本海沿岸域の基本構造は,沿岸部にクサビ状構造があったことを示し,その西側で湧昇流が発生していたことが示唆される.特に寒流が北から流入した場合,さらにコリオリの力が加わって大規模な湧昇流が発生していたことが推定される.一方,有機物の保存を考えた場合,中新世の日本海はシルで境されたシルドベーズンであることから,より深い海域ほど溶存酸素量が小さく,有機物は分解されずに保存される.秋田地域の東西を比較すると,沿岸沿い油田系列の泥岩には有機物の保存を示すラミナが発達し,構造的に高い位置にあった出羽丘陵ではラミナは全く見られない. 以上のことから本邦の石油根源岩分布域を推定すると次のようになる.中新世の沿岸部にクサビ状地形があり,さらにコリオリの力が加わって大規模な湧昇流が発生していたことを示唆する海域で,かつ有機物が分解されずに保存される深い海域が最も石油根源岩分布に適している.これらに対応する地域として,秋田市から本荘市にかけての北由利衝状断層群沿い西側地域と新潟県長岡地域およびその西方,そして北蒲原地域などであり,秋田県中央部の出羽丘陵地帯などは石油根源岩の分布が期待できない.
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