研究概要 |
1.九州北西部の炭田地域の古第三系のうち,次の地域・地層を対象に,1)堆積相観察を行って堆積環境の推定を行い,2)渦鞭毛藻化石分析に適した泥質岩資料を連続して採取するとともに,3)貝化石標本の採取を行った。○天草地域:福連木層・志岐山層・砥石層,○高島地域:二子島層・沖ノ島層・伊王島層・大明寺層,○崎戸・松島地域:苺島層・崎戸層・間瀬層・徳万層,○佐世保地域:尼潟層・鹿子前層・但馬岳層・加勢層,○唐津地域:厳木層・杵島層・畑津頁岩層,○筑豊地域:則松層・脇田層、○油谷湾地域:峠山層・人丸層・黄波戸層,○三池地域:勝立層 2.対象層のうち,海成層からは渦鞭毛藻化石の産出がほぼ連続的に確認された。その群集は,Glaphyrocysta, Spiniferites, Homotryblium, Cordosphaerldium, Hystrichokolpoma, Heteraulacacysta, Deflandreai, Dracodinium, Wetzeliellaなどの比較的多様な種群から構成され,また明瞭な層位変化を示す。このことから,西南日本の古第三系は渦鞭毛藻化石による生層序区分が充分可能であることが確認された。またその群集内容は,同時代の常磐〜北海道地域のものとかなり種構成が異なっている一方,東シナ海南部の同時代群集との共通性が高い。このことは,古第三紀の北西太平洋沿岸地域は渦鞭毛藻化石の古生物地理区がほぼ日本列島や中央部を境界として分化していたこと,そして渦鞭毛藻化石層序区分は高緯度地域と低緯度地域とで別個になされるべきことを示す。 3.対象層から得られた貝化石について同定・記載を行った結果,佐世保層群の貝類化石群には門ノ沢動物群の要素はなく,芦屋動物群に含められること,すなわち佐世保層階の上限年代は中新世にまでは達しないことが明らかとなった。
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