研究概要 |
平成14年度〜16年度3年間の研究の成果は,以下のようにまとめられる. (1)中国安徽省で発見,発掘された大量のウサギ化石(Pliopentalagus)は,中新世末期から鮮新世後期にわたる3種に区別でき,それらと現生のアマミノクロウサギは,一つの進化系統をなすことを明瞭に示した.(2)そのうち一番古い種は,海外共同研究者の金昌柱がPliopentalagus huainanensisという名で記載した.残り2種については筆者(冨田)が記載論文を執筆中である.(3)研究の過程で,その系統上の位置が問題になった既知のPliopentalagus nihewanensis(Cai,1989)は,その所属する属をTrischizolagusに変更すべきことが明らかになり,その論文は"印刷中"(Tomida and Jin, in press)である.(4)北アメリカのAztlanolagusは,中国のPliopentalagusの原始的な種(P.huainanensisまたは未知の近縁種)の直接の子孫であり,アジアから北アメリカへの移動の時期はおそらく5〜6MAであったことを明らかにした.(5)Aztlanolagus agilisは中国のPliopentalagus spp.とくにP.huainanensisに大変よく似ており,その所属する属をPliopentalagusとし,P.agilisとすべきことを明らかにした.上記4とともに,これらをまとめた論文は,冨田が執筆中である.(6)ウサギ類に関する最新の分子系統学の論文であるMatthee et al.(2004)と比較すると,少なくともPliopentalagus-Pentalagusの系列が分岐した時期は,化石の方から推定される時期(7MA以前)にかなり近い数字(9〜10MA)が出ている.(7)今後の研究は,p3に5つの湾入すべてを持つ他の属にひろげ,現生種も化石と同様な手法で研究し,現生・化石を合わせた規模の大きい系統樹を作り,これらと分子系統学の結果とを比較,検討する予定である.
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