研究概要 |
(1)天然産結晶(メラノフロジャイト)の400Kにおける単結晶X線測定をCCD積出器を搭載した回折計により測定し,ゲスト分子の運動及び挙動についての精密解析を行った.転析精度は普通の意味では十分なレベルになっているが,このゲスト分子の精密な解析のためにはCCD検出器でより高角のBragg角での測定が必要であることが判明した. (2)大容量外部記憶を有する小型計算機を導入し,メラノフロジャイトの分子動力学シミュレーションを行ったが,X線回折法の結果の再現に成功していない.ポテンシャルの検討をする必要がある。 (3)ゲスト分子としてCH4,CO2,N2,NO, H2O各分子を含むシリカ包摂化合物の水熱合成の実験を行い,結晶解析に使える単結晶の合成に成功した.合成法をほぼ確立できた。 (4)ゲスト分子とシリカフレームワークの相互作用の実験的研究は,低温での双晶形成による困難を避けるため400K程度の高温型領域でかつ加圧条件下でゲスト文子の運動を抑制して回折実験を行うという考えで,ダイヤモンドアンビルを導入した.現在,調整実験抑制を行っている段階である. (5)石英等の他のシリカでは分子動力学シミュレーションが成功しているのに対して,クラスラシルやトリディマイトの低密度シリカではでは成功しない理由を考察した結果,これらの物質における原子の転換序分布の精密な研究が実験と理論の双方から必要であるという結論に到達して,研究がより容易と考えられかつ多数の研究成果が蓄積されているトリディマイトについて研究を進めた。その結果,トリディマイトでは原子の無秩序運動とフォノンモードの間に相関があり,これらの間にカップリングの概念を導入することが可能であるという結論を導いた。理論的な説明の完成は今後に待たなければならないが,クラスラシルを含めた,これらの物質では普遍的にこの現象がおこっている可能性を示す事が出来た。
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