研究概要 |
岩石中の鉱物結晶の成長・冷却に際して生じる微細組織・微細析出物の研究は、その生成過程を知る上で重要である。このような微細組織の研究は、偏光顕微鏡による組織の観察やEPMA等による元素分布の測定により行われているが、X線回折法による研究はほとんど行われていない状況である。 これまでに、マイクロピンホールを用いて単色X線を直径数マイクロメートル以下に絞り試料結晶の微小部分に照射し、非破壊で回折強度を測定する方法の確立を目的として研究を行ってきた。単色X線を用いて回折実験を行う場合、最も単純な装置でも一軸による回転が必要であるが、その交差精度が不-十分であった。そこで、試料の回転角度に対する中心のずれを自動的に補正する試料回転装置の開発を目指した。 本研究の計画段階では、XYステージにより補正する事を考えていたが、XYステージの揺動による誤差も問題となる。マイクロビームに対して垂直な成分のみを補正すれば、目的とする性能を最低限実現できることから、電動精密Xステージのみを組み込むこととした。装置作成後、試運転を行い試料の回転角に対する回転中心のずれを光学顕微鏡により測定し、自動的に補正を行うためのデータを収集した。現在までの所プログラム上の問題からうまく同期を取る事ができず十分に補正することができていないため今なお開発中である。現状での装置の評価のため、SPring-8でX線回折実験を行った。試料は変成岩中の微小な鉱物試料(Jadeite, Omphacite, Riebeckite等)である。EPMAによって化学組成の分析を行い目的の試料を事前に選定しておいた。この部分に直径2マイクロメートルのマイクロピンホールを用いて絞った0.7オングストロームの単色X線を照射し、イメージングプレートを用いて振動写真の撮影に成功した。今後、これらの回折写真から結晶構造の解析も行う。
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