研究概要 |
準安定励起状態のN_2分子の反応過程についての研究を行った。レーザー二光子励起法を用いてa^1Πg状態のN_2分子を基底状態のN_2分子から直接生成させ、さらに、この状態に隣接するa'^1Σu^-状態を衝突緩和により生成させた。また、H原子等の反応生成物を二光子レーザー誘起蛍光法によって検出した。それにより、以下のことを明らかにした。(1)N_2(a')は水素、メタン等多くの水素化合物と効率よく反応し、H原子を主生成物として与える。(2)N_2(a')とCH_2D_2、HODの反応において、H原子とD原子の生成収率は等しい。これは、H(D)原子の生成が直接エネルギー移動によるものではなく、錯体を経由して進行することを意味する。(3)N_2(a')はO_2やXeなどの分子(原子)との衝突により効率よく項間交差を起こし、励起三重項状態のN_2(B^3Πg)およびN_2(W^3Δu)が生成される。一方、N_2やArによる項間交差の効率は窮めて低い。また、励起三重項状態のXe原子6s[3/2]_1からのエネルギー移動により励起三重項状態の窒素分子N_2(B^3Πg)およびN_2(W^3Δu)が選択的に生成されることを見出した。N_2(B^3Πg, v=0)の総括速度定数は過去に報告のある振動励起のN_2(B^3Πg, v=1)のものに比べて一桁小さく、大きな振動状態依存を示す。励起三重項状態のXe原子から生成するH(D)原子の生成量を内部標準とすることで、N_2(B^3Πg)とH_2(D_2)の反応の主生成物が、H(D)原子であることを見出した。一方、N_2(A^3Σu^+)への緩和はあまり重要ではない。これらの知見は基礎科学として重要であるのみならず、プラズマプロセス等を理解し制御していく上でも新たな視点を与えるものである。
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