研究概要 |
アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、およびウラシル(U)のための分極モデルポテンシャル関数を、ab initio分子軌道法の計算結果を基にして開発した。分子軌道計算のレベルとしては、MP2/6-31+G^*を用いた。分極モデルポテンシャル関数は、クーロン項、レナードージョーンズ項および分極項からなる。クーロン項の点電荷は、静電ポテンシャル最適化法を使用することによって決定した。分極項の多中心分極率は、分極可能一電子ポテンシャル最適化法を使用することによって決定した。多中心分極率として、原子分極率を採用した。原子分極率モデルは、核酸塩基の分極をよく再現した。分極モデルポテンシャル関数を使用する計算では、ワトソン-クリック型のA-TとG-Cの塩基対の相互作用エネルギーは、それぞれ-15.6と-29.2kcal/molであった。Hoogsteen型のA-T塩基対の相互作用エネルギーは-17.7kcal/molであった。これらの結果は、MP2/6-311++G(3df,2pd)を用いた量子化学計算をよく再現している。A-TとC-Gのスタッキングの相互作用エネルギーは、それぞれ-9.3と-10.7kcal/molであった。これらの結果は、MP2/6-311++G(2d,2p)の計算結果をよく再現している。更に、核酸塩基の表面に、ナトリウムイオンまたは塩素イオンが近接した場合の、相互作用エネルギーの計算を行ったところ、エネルギー表面の再現は非常に良かった。核酸塩基は、かなり大きい分極異方性を示す分子であるが、簡単な原子分極率を採用することによって、高度な量子化学計算結果をよく再現するポテンシャル関数を作ることができることを示すことができた。
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