研究概要 |
ピリジニウムイリドを用いたジアステレオ選択的シクロプロパン化反応について,不斉源として8-フェニルメントールを用いたα-ピリジニウム酢酸エステルを使って置換基効果を検討したところ,ピリジン環の4位に電子供与性のメトキシ基を導入した場合,基質としてt-Bu置換メチリデンマロノニトリルをイリドと反応させると96:4の高い選択性でtransのみのシクロプロパン生成物が得られることを見出した。しかしながら,他の基質の検討の結果,芳香族置換のもので83:17程度の選択性が実現できたものの,その他のもので70:30にも満たないものも多かった。そこで,選択性を向上させる目的で類似の8-フェニルメンチルアミンを不斉源とするα-ピリジニウム酢酸アミドを検討することにした。必要とする8-フェニルメンチルアミンの合成について8-フェニルメントンのメトキシイミン誘導体を用いて種々検討したところ,ジアステレオ選択性最高89:11,収率97%で目的物を得ることができた。また,シクロプロパン化反応を検討したところ,t-Bu置換メチリデンマロノニトリルで2:98の選択性を実現することができ,他の基質でも平均するとエステルの系を上回る選択性(63:37から12:88)が達成された。そして,興味深いことにアミドの系とエステルの系とで主生成物の立体化学が逆になっていることが見出された。また,溶媒や温度条件を選ぶことにより,アミドの窒素がシアノ基に攻撃することによって形成するイミド構造を含む二環式化合物が定量的に得られることを見出した。ピリジン側にキラル補助基があれば不斉源の回収できることになるので,3位にいくつか導入して検討したが不斉が誘導されなかった。また,クロロケトンと共役オレフィンの間のシクロプロパン化反応が触媒量のジメチルアミノピリジンによって進行することを見い出した。
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