| 研究概要 |
DNAにジメチルジオクタデシルアンモニウム塩を加えることにより,DNA-第四級アンモニウムイオン錯体(DNA-QAIC)を得,DNA-QAICがフォトクロミック反応の媒体となりうることを示した.
ジアリールエテンをDNA-QAICに取り込み延伸処理したフィルムは,ジアリールエテンのフォトクロミック反応に伴い可逆的に大きく旋光度が変化した.
ジアリールエテンは,溶液中ヒドロキシル基の有無に関わらず同様の量子収率で光環化反応が起きるが,DNA-QAIC存在下両方のベンゾチオフェンの2位にヒドロキシメチル基をもつ1,2-ビス(2-ヒドロキシメチル-3-ベンゾチエニル)パーフルオロシクロペンテンは,フィルムおよび溶液中ともに,DNA-QAICと強く相互作用するため分子の動きが抑制され光環化反応が起きなかった.これらの事と分子構造を考慮すると,ジアリールエテンは核酸塩基対間に部分的にインターカレントされていると考えられる.
アミノアントラセンはDNAにインターカレートすることが知られている.アミノアントラセンと結合したジアリールエテンは,アミノアントラセン部位がDNAにインターカレントし,溶液中DNA-QAIC存在下フォトクロミック反応を示し,蛍光挙動に変化が生じた.
スピロピランは,粉末ではフォトクロミック反応を示さないが,DNA-QAIC中熱可逆フォトクロミック反応を示した.DNA-QAICに取り込まれ,DNA-QAICをマトリックスとしてフォトクロミック反応を示したと考えられる.スピロピランのDNA-QAICフィルム中での熱可逆フォトクロミック反応は,ポリスチレンフィルム中に比べ,スピロピランの熱戻り反応が遅く,定常状態での吸収極大値が小さいことがわかった,スピロピランは,DNA-QAICに取り込まれたことにより立体的拘束を受け,メロシアニン構造に変化しにくくなったためと考えられる.
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