研究概要 |
光学活性の異なるアミノ酸分子を含む水溶液中の分子間水素結合構造に関する知見を得る目的で、2.5mol%D,L-およびL-アラニン水溶液について中性子回折実験を行った。中性子回折実験は、日本原子力研究所3号炉に設置されている東京大学物性研究所4G回折計および高エネルギー加速器研究機構に設置されているHIT-IIを使用して25℃で実施した。置換可能な水素原子のH/D分率が96.1%Dの試料について観測された散乱断面積の差を求めたところ、D,L-およびL-アラニン溶液の分子間構造に有意な構造の違いが存在する事を見出した。観測された分子間干渉項の差Δi(Q)=[D,L-アラニン重水溶液]-[L-アラニン重水溶液]、のフーリエ変換から求めた差の分布関数Δg(r)には、r=2および2.5Åの原子間距離に負のピークが観測された。H/D同位体分率の異なる3種類の2.5mol%D,L-アラニン水溶液について観測された分子間干渉項を組み合わせた解析より、H-H、H-XおよびX-X(X : O, C, N)部分構造因子および部分分布関数を導出した。Δg(r)のr=2および2.5Åに観測された負のピークは、各々最近接分子間水素結合O-HおよびH-H距離に対応することが明らかになった。Δi(Q)の最小二乗法解析の結果、L-アラニン水溶液に比較して、D,L-アラニン水溶液の方が約2%程分子間水素結合は弱い事が明らかになった。 さらに、^<14>N/^<15>NおよびH/D同位体置換法中性子回折実験により、3mol%D,L-アラニン水溶液および4mol%グリシン水溶液中における、アミノ酸分子内アミノ基、メチル基およびメチレン基周囲の水和構造の詳細を明らかにした。
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