研究概要 |
酸性水溶液中において、[Mo_3S_4(H_2O)_9]^<4+>(1)と[(Cp^*RhCl_2)_2]との反応より、キュバン型Mo_3RhS_4骨格をもつアクア錯体、[{Mo_3RhCp^*S_4(H_2O)_7(O)}_2]^<8+>(2)を単離した。2は、パラトルエンスルホン酸塩[{Mo_3RhCp^*S_4(H_2O)_7(O)}_2](CH_3C_6H_4SO_3)_8・14H_2O([2](pts)_8・14H_2O)として三斜晶系空間群P-1、Z=2で結晶化した;a=12.2631(8)Å,b=15.911(1)Å,c=17.389(3)Å,α=63.704(3)°,β=78.688(2)°,γ=81.038(2)°,V=3026.3821Å^3。本反応では、Mo_3RhCp^*S_4骨格がオキソ架橋によって二量化した、いわゆる、ツインキュバン型骨格が生成する。これは、RhCp^*基の非常に強いLewis酸性と、1のモリブデンが比較的高酸化状態にあったため、モリブデンに配位していた水分子からプロトンが脱離して生成した、ヒドロキソ配位子をもつ中間体[Mo_3RhCp^*S_4(H_2O)_7(OH)_2]^<4+>二分子から、さらに二つの水分子の脱離を経てオキソ架橋が生成し、骨格が二量化したものと考えられる。Mo_3RhS_4骨格間のオキソ架橋部位はほぼ直線的な構造をしており、そのモリブデン-酸素間の結合距離は1.901(6)Åおよび1.891(6)Å、Mo-O-Mo角は164.3(3)°である。この結果より、二つの架橋酸素原子の塩基性は弱いと考えられる。2の架橋酸素原子は強酸性溶液中においてもプロトン化されない。2は塩化物イオン(>0.5M)が存在するとオキソ架橋が切断されて、シングルキュバン型のMo_3RhS_4骨格をもつ[Mo_3RbCp^*S_4(H_2O)_7Cl_2]^<4+>錯体を生成する。
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