研究概要 |
バルク状態の磁性物質をnmスケールまで微小化することによって得られるナノスケール磁性体は,新しい磁気メモリーというような応用の面ばかりでなく,超常磁性や磁気量子トンネリングなどの興味深い現象を示す点で近年注目されている。ナノスケール磁性体の開発には,トップダウン方式とボトムアップ方式の二種類の方法がある。本研究では,ボトムアップ方式ナノスケール磁性体である単分子磁性体[Mn_<12>O_<12>(O_2CPh)_<16>(H_2O)_4]およびナノワイヤー磁性体[Mn(saltmen)]_2[Ni(pao)_2(py)_2](ClO_4)_2とトップダウン方式ナノスケール磁性体であるアモルファスSiO_2中のNi(OH)_2モノレイヤーナノクラスター(Ni-MNC)の磁気的性質を熱力学的立場から調べた。 [Mn_<12>O_<12>(O_2CPh)_<16>(H_2O)_4]の磁場中での熱容量に磁場方向依存性を見出し,一軸性異方性のみをもつS=10のスピンハミルトニアンを用いて10K以下の熱容量データの磁場方向依存性をうまく再現した。また,[Mn(saltmen)]_2[Ni(pao)_2(py)_2](ClO_4)_2の熱容量の磁場依存性は一次元反強磁性磁性体の特徴を示した。一方,Ni-MNCの熱容量の磁場依存性から,Ni-MNC内およびNi-MNC間には強磁性相互作用が働いており,磁気エントロピーの値から観測されたブロードな磁気熱異常がNi^<2+>(S=1)の磁気秩序化によるものであることが結論された。
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