研究概要 |
天然の光合成系や呼吸系では絶縁体である二分子膜に高速電子伝達系を埋め込み,NADH合成,ATP合成など重要な機能を行っている.本研究の目的はこの高速電子伝達系を設計・構築することである.従来のリポソーム二分子膜を用いた研究,即ち,合成電子伝達系を二分子膜中に埋め込み,二分子膜を介した内外水相間の酸化還元反応を用いた手法では,2つの界面反応を含むため,電子伝達系自身の適切な評価には限界があった.本研究では伝導度を直接計測することで,得られた電子伝達系の評価を行った. 本研究ではナノスケールの高速電子伝達系を構築するため、ビスイミダゾール置換ポルフィリンのGa錯体を作製し,ガリウムポルフィリンが6配位をとるため,ガリウム-イミダゾール間の配位結合により複数のポルフィリンが1次元の連鎖体を形成する.MALDI-TOF質量分析,UV-Vis吸収スペクトル,x線回折などにより構造を決定し,AFMにより組織体を観測した.ガラス基板上に作製したマイクロギャップ電極状にビスイミダゾリルポルフィリンガリウム連鎖体を載せ,電極間の伝導度を暗時と光照射時で測定した.その結果この連鎖体は暗時でも半導体レベルの導電性があり,また光照射時に伝導度が8倍上昇したことがわかった. また十字型のテトライミダゾリルポルフィリン置換ポルフィリン(イミダゾリルポルフィリン五量体)を作し,亜鉛イオンの導入により,二次元に伸長するポルフィリン組織体フィルムを調製した.ギャップ電極上で再組織化を行い,電極間の伝導度を測定した.暗時の伝導度は,1次元Ga錯体が高く,光照射時との暗時の伝導度の差は2次元Zn錯体が大きい結果が得られ,金属の種類によりこの違いが生じたものと考えられる.
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