研究概要 |
II-VI族化合物半導体ナノ結晶では電子は有効ボア-半径の中に閉じ込められるので、量子効果を示す。これを希土類イオンに付いて系統的に調べた研究はあまりない。ナノポーラスの細孔を持つSiO_2を主成分とするゾルゲルシリカガラスSiO_2およびシリカナノチューブMCM41を母体に取り、これにナノ半導体微粒子と希土類イオンをドープさせ、その発光を研究した。まずそのような10nmの細孔の試料を直接観察した。希土類(III)イオンおよび希土類錯体をドープしたゾルゲルがラスの安定性は結晶場分裂を指標とした方法で判断できた。SiO_2を母体とする希土類イオン間のエネルギー移動機構がトラップ律速であること、また光学活性希土類錯体の構造解析にCPL分光の有用性が明らかにされた。半導体ナノ結晶(Zn,Cd)S:RE(III)(RE=Tb^<3+>,Eu^<3+>etc)を合成し、時間分解蛍光(TRS)、蛍光スペクトル、寿命およびそれらの温度変化を測定し、バルク結晶の場合と比較し、発光特性評価を行った。SiO_2/CdS:REはCdSの表面欠陥にもとずく赤色発光とf-f遷移が重なるので、扱いにくい。NC試料:MCM41/CdS:Eu^<3+>,Tb^<3+>(逆ミセル法で合成)のサイズはTEMおよび励起スペクトル/拡散反射スペクトルによる実測/計算値より約3-5nmであった。しかし多くの場合ブロードな発光バンドがCdS及びSiO_2母体に基づき出現する。そこで電子状態がより解明しやすいMCM41/CdS:Euを研究した。NC固有のスペクトル特性は、表面修飾剤(C16,C10 AOT)の違いが寿命の差になること、ピコ秒の寿命成分の存在、dopants(Eu,Tb)の位置のブルーシフト、顕著な磁気双極子遷移などに見られている。量子効果がsp-d混成に基ずくか否かの解明には複雑なvibronic bondsおよび励起スペクトルの解析が必要である。量子閉じ込め効果の別の検証として、ナノポーラスなZrO_2薄膜にドープされたCdS,ZnSからの大きな非線形効果をZ-scan法によりフェムト秒レーザー励起下で見い出した。
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