研究概要 |
C_<60>フラーレンをトルエン/ジメチルホルムアミド/過塩素酸リチウムを混合した溶液中に溶かし,電気化学的手法を用い,開端処理をした単層ナノチューブ中に効率よく一次元配列させる実験を遂行した.C_<60>フラーレンが還元される-0.5V程度の電位をかけ,陽極および陰極に取り付けたマット状に加工した単層ナノチューブ試料へのドーピングを行った.結果は,陽極に取り付けたナノチューブは多くのフラーレン分子をその内部に取り込み,効率よくピーポッド試料になっていたのに対し,陰極に取り付けたナノチューブにはほとんどフラーレン分子が取り込まれないという結果を得た.このことは還元されたフラーレン分子が陽極に到達し,効率よくチューブ内に取り込まれた結果として解釈できる.また,陰極に堆積した物質は,支持電解質として用いた過塩素酸リチウムが電離することによって析出したリチウムである.さらに,ピーポッド試料内で起こるフラーレンの熱重合反応についてもラマン散乱を用いて詳細に調べ,C_<60>分子の融合過程の詳細な検討を行った.その結果,まず,直径0.7nmのフラーレン分子と同じ大きさのチューブが成長し,その後,外側のチューブ壁と内側のチューブ壁との間隔がファンデルワールス距離に一致するように直径変換を起こすことをつきとめた.内側のチューブからのラマン散乱線の詳細な解析により,まずジグザグ型の(9,0)ナノチューブが生成し,その後,より安定な構造へと直径変換を起こすモデルを提唱した.ピーポッドから作製した二層ナノチューブへのハロゲン分子の化学ドーピングも試み,外側のチューブからBrへの電荷移動は起こるが,内側のチューブからは起こらないことをラマン散乱の実験で確認した.ペンシルバニア州立大学のグループとの共同研究としてこれらの実験事実の理論的解釈も試み,実験と一致する結論を得た.
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