配分額 *注記 |
3,700千円 (直接経費: 3,700千円)
2004年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2003年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2002年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
|
研究概要 |
自然界におけるホモキラリティーの発現を、散逸構造としてのキラル対称性の破れ、すなわち非平衡開放化学系においてゆらぎが成長した自己組織化構造とみなしたモデルが、約20年前に提唱された(D.K.Kondepudi, G.W.Nelson, Neture,1985,314,438)。しかし、実際にこのモデルにしたがって、自発的ホモキラリティーの発現が確認された研究例は無かった。 そこでまず、1,1'-ビナフチルの過冷却融液中からの結晶化について研究を行なった。1,1'-ビナフチルは、145℃以上158℃:以下においてキラル結晶として析出することが知られており、またその結晶化挙動は、キラル自触媒的であることも確認されていた(D.K.Kondepudi, J.Laudadio, K.Asakura, J.Am.Chem.Soc.,1999,121,1448)。結晶成長フロント温度が145℃以上158℃以下の場合には、結晶相の光学純度はほぼ60%前後で一定となり、この現象については、結晶化系における温度分布、結晶相のX線回折から、結晶相の成長フロントという開放化学系において、キラル対称性の破れ転移が起こったためであることが確認された。また、このキラル対称性の破れ転移を説明する非線形動力学モデルを作成し、ラセミ環境が不安定化するメカニズムの検討を行なった。 この研究と平行して、不斉アミノアルコールを触媒補助剤とした不斉増幅現象のメカニズムを解析する研究も行なった。本研究の最終目標は、有機化学反応系においてKondepudi & Nelsonモデルに対応するキラル対称性の破れ転移を実現させることである。その候補としてSoaiらにより発見されたキラル自触媒反応(K.Soai, et al.,Nature,1995,378,767)があるが、不斉増幅現象が観察される化学系は、関与する分子がこのキラル自触媒反応と非常に類似している。この不斉増幅反応を解析したところ、Michaelis-Menten型の中間体が存在することが予想された。
|