研究概要 |
流量比法flow ratiometryとは,別々に送液される2液を様々な流量比R_fで合流させ,この比と下流で得られる検出器シグナルとの関係より目的とする情報を得るものである。本研究では,物質の疎水性に関わる定数である分配係数K_Dを簡便かつ高い効率で測定できる分析法の確立を目的として,流量比法の開発を行った。 1.有機相/水相の体積比変化に基づく分配係数測定 バッチ系でクロロホルム/水体積比を変化させて薬物の分配を行い,体積比とそれぞれの相における被験物質の吸光度との関係よりK_Dを求めた。本研究の成果はフロー系への応用のための基盤となった。 2.段階的流量比法の揮発性物質のK_D測定への応用 細管中の流れの中でクロロホルム/水流量比R_fを段階的に変化させて薬物の分配を行い,相分離後,いずれかの相における吸光度Aを下流で測定し,R_fとAとの関係よりK_Dを求めた。さらに,流れの微小領域を相分離を行うことなくon-lineで観察することによって各相を測定できる検出法を開発し,測定効率を1測定あたり5minまで向上させた。従来法では測定困難な揮発性物質のK_D測定にも応用した。 3.フィードバック制御流量比法による酸解離定数の迅速測定法の開発 半当量点近傍のみで滴定液と被滴定液の流量比スキャンが行えるフィードバック制御流量比法を開発し,薬物の分配現象と密接に関わる酸解離定数K_aの簡易・迅速測定を行った。 4.非経験的分子軌道法によるK_Dの推算 実測値と理論の照合を目的に,非経験的分子軌道法によるK_Dの推算を行った。166種の有機化合物に対して推算値と文献値の比較を行い,水素結合能や静電気的相互作用の相違を考慮してK_Dを予測する新たなアプローチを見いだした。
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