研究概要 |
マメ科モデル植物ミヤコグサ(Lotus japonicus)を用いて再分化方法,抗生物質による選択条件を詳細に検討し,高効率で信頼性の高い形質転換法を開発した.マメ科植物固有機能の分子機構を明らかにするために,この条件を用いてタギング用ベクターを導入した形質転換体を作製した.このベクターのT-DNAには,強力なエンハンサー配列3コピーを含むプロモーターに加え,開始コドン,スプライス供与配列,スプライス受容配列が含まれている.このためT-DNAが遺伝子間領域,または遺伝子内の非翻訳領域・エクソン・イントロンのいずれに挿入されても,近傍の遺伝子あるいはエクソンの一部または全部が共生的に発現され,効率よく変異を誘導することが期待された. 形質転換当代(T_0)のタギングラインにミヤコグサ根粒菌Nesorhizobium loti Tono株を接種後,成熟した植物体の根粒着生や地上部の形態を観察し,変異体のスクリーニングを行った.約3,500個体のスクリーニングから地上部・根・根粒などの形態が変化した45の優性変異体候補を単離した. ゲノムサザン解析によってT-DNAの挿入数を確認したところ,任意に選んだ44ラインの内,37ライン(84%)に1コピーのT-DNAが挿入されていた. TAIL-PCR法によってT-DNA近傍塩基配列を単離し,その配列と対応するゲノムクローンの検索を行い,T-DNA近傍遺伝子を予測した.近傍遺伝子の転写物量をRT-PCRで解析し野生型と比較したところ,11ラインのT1個体中4ラインで転写物が増加した.このことから,本ベクターによりミヤコグサに遺伝子アクティベーション効果を引き起こされ,その性質が後代に遺伝することが確認された.
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