研究分担者 |
戸田 一雄 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (80134708)
宮崎 敏博 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助手 (10174161)
佛坂 斉祉 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 講師 (90199513)
宮本 武典 日本女子大学, 理学部, 助教授 (10167679)
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研究概要 |
哺乳類副甲状腺(上皮小体)細胞の細胞膜にはCa^<2+>感受性受容体(CaR)が発現しており,この受容体により細胞外Ca^<2+>濃度を直接検出しながら上皮小体ホルモン(PTH)分泌量を変化させる。カエル副甲状腺においても同様な機序が働いているかについて電気生理学的に解析した。ウシガエル副甲状腺を摘出し,酵素処理により単離副甲状腺細胞を得た。K^+電極内液を用いた全細胞固定法によると,単離細胞は,-30±2mV(N=44)の静止電位,13.7±0.9GΩの入力抵抗および7.6±0.2pFの膜容量を示した。副甲状腺細胞に-84mVの保持電位から脱分極パルスを与えると,一過性の内向き電流を発生したが漏洩電流以外の外向き電流は示さなかった。この内向き電流は、細胞外液のNa^+をNMDG^+で置換すると消失し細胞外液へのフグ毒(TTX)の添加でも消失したので,TTX感受性電位依存性Na^+電流であると結論した。細胞外液のCa^<2+>濃度を静止時の1.8mMからそれ以上に上昇させると,副甲状腺細胞はCa^<2+>濃度に依存した顕著なコンダクタンスの増大を示した。この電流応答の逆転電位は,細胞内のCl^-濃度に従って移動した。電極内液から細胞内に0.8mM Ca^<2+>を灌流してもニフルミン酸で強く抑制される同様な電流が誘発され,Ca^<2+>誘発性Cl^-電流であると結論した。細胞外Ca^<2+>によって誘発される電流応答は、細胞外へのGd^<3+>の添加とPLCの阻害剤であるU-73122の細胞内投与によって強く抑制された。細胞内へのイノシトール1,4,5-三リン酸の投与はなんの応答も誘発しなかったが,アラキドン酸(AA)の安定なアナログであるエイコサテトライン酸(ETYA)の細胞内投与やアラキドン酸の細胞外投与は大きな電流応答を誘発した。以上の結果より次のような発現機序が示唆される。副甲状腺細胞に発現するCa^<2+>感受性受容体への細胞外Ca^<2+>の結合→Gタンパクの活性化→PLCによるPIP_2からのDAGの生成→DAGリパーゼによるAAの生成→AAによるCa^<2+>流入性イオンチャネルの活性化→細胞内Ca^<2+>濃度の上昇→Cl^-チャネルの活性化というカスケードである。
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