研究概要 |
日本国内やベトナム,タイ,インドネシアなどの東南アジアにおける現場採集,および世界各地の大学・博物館からの借用標本に基づいて,アフリカ東岸,紅海からミクロネシアに至るインド洋-太平洋の全域におけるヒイラギ科魚類の分類学的再検討を行った.その結果次のような結果が得られた. 1.20世紀を通じて極めて分類学的混乱の激しかったヒイラギ属魚類について重点的に研究を進め,本属内に含まれる種を5種群23種と種群を構成しない3種の計26種に分類した.なお,このうち4種は現在のところ未記載種である(1種は近日公表される).また,本属に含まれる種の内,数種については,より正確な異名関係が明らかになり,従来使用されていた学名が変更される. 2.上記種群の内,Leiognathus aureus種群,タイワンヒイラギ種群,Leiognathus decorus種群については,研究が終了あるいはほぼ終了した.しかし,シマヒイラギ種群,および最も激しい混乱状態に陥っているLeiognathus oblongus種群については,今回の研究で一応の結果が得られているが,詳細な研究が引き続き必要である. 3.コバンヒイラギ属とウケグチヒイラギ属については,近年分類学的整理がほぼ完了しており,今回の再検討でも,ほぼこの研究成果の有効性が認められた.すなわち,両属ともにそれぞれ5種が含まれる. 4.上記の結果,現状では本科魚類は3属36種に分類することができ,これらの簡潔な検索表とそれぞれの種の特徴,分布,および異名関係の証拠などを研究成果報告書で表した. 5.本研究で導入したヒイラギ属の各種群は,形態的まとまりが強く,今後これらのほとんどが属に昇格する可能性が高く,属の再検討と属間の系統関係の解析が今後の課題である. 6.本研究に付随して行った,トウゴロウイワシ科,クロサギ科などの魚類についても,数種の新種記載を行った.
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