研究概要 |
本研究においてインド西太平洋に分布するヤドカリ類について、日本とその周辺海域における最新の採集調査、日本、米国、ヨーロッパ、アフリカの博物館に所蔵されている標本を調べた。特に詳細に調べたのは、ホンヤドカリ科のCatapagurus, Hemipagurus, Icelopagurusu, Tomopaguropsis, Micropagurus、オキヤドカリ科のParapagurus, Sympagurus, Oncopagurus, Tylaspis, Tsunogaipagurus, Paragiopagurus, Strobopagurus,ヤドカリ科のCalcnius, Eiogenes, Pseudopagurustes, Dardanus,オカヤドカリ科のCoenobitaである。その結果、日本のヤドカリ相は従来知られているよりはるかに多数の種が分布していることが、明らかになり、生物地理的には特に紀伊半島以南の太平洋側に、多くの新記録種および新種が発見された。これはインド-西太平洋生物地理要素が、従来考えられていたよりもより大きな比重を占めていることになる。 また本研究によってはじめて日本海のヤドカリ相の詳細が解明された。これまで日本海の潮間帯および浅海域から採集されたヤドカリ類を調べ、3科17属54種を同定した。この中には、1種の新種のツノヤドカリDiogenes(イザナミツノヤドカリ)が含まれる。これらの標本は主として富山市科学文化センターの所蔵標本、および京都府栽培漁業センターの本尾洋氏のコレクションによるもので、これにさらに国内外のいくつかの博物館の所蔵標本も調べたものである。これらのヤドカリ類の大部分は生物地理要素としては、日本およびその近隣の温帯域に分布する種であるが、少数のインド-西太平洋に分布する種、および北太平洋に広く分布する種を含んでいた。
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