研究概要 |
京都議定書(1997)により地球温暖化ガスとして規制されているSF_6ガスについて、(a)温室効果のメカニズムと(b)分解生成分子のオゾン生成阻害についても調べた。 (a)SF_6はCO_2レーザーの可飽和吸収体となり、1分子当りの光子吸収量が大きい。これは振動モードが多く、縮退していることや構成原子が重いことにより、振動回転準位が広がり、低い準位から準連続状態になっていることに起因する。250ns幅のCO_2レーザーの各分枝を用いたポンプ・プローブ法で熱的緩和時間が500μs以上と長いことを観測した。これは準連続状態はエネルギーリザーバーとして働き、赤外光の多光子吸収を促進していると考えられる。結果として熱保存に寄与している。 (b)SF_6がオゾンを破壊していることについて、先ず、酸素O_2ガス260Torrを30,60,90分間放電させて、CO_2レーザー(パルス幅30μs)9.6μm分枝でのオゾンの吸収スペクトルの特有の谷の深さを観測して充分にオゾンが生成されていることを確認した。次にフロンガスR-22を酸素に10,30Torrだけ混ぜて、同じく放電させて、谷の深さが浅くなり、オゾン生成が阻害されていることを確認した。 更に、フロンと同様に、酸素にSF_6を混ぜて放電させて谷の深さを測定したところ、90分放電では、9.6μm分枝の長波長側に新たに鋭い吸収スペクトルが現れ、谷の深さがかなり浅くなった。遊離したフッ素の外にSF_2O_2,SF_2Oなどの分解生成物がオゾン生成を阻害していると考えられる。 従来は問題ないとされていたSF_6も、超高層では紫外線により解離されてオゾン層破壊に影響することを基礎的分光実験で明らかにした。即ち、赤外光を多光子吸収して温室効果に寄与するばかりでなく、その分解生成物はフロンガスと同様にオゾン層破壊にも影響することを確かめた。
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