研究概要 |
研究成果の概要は以下の通りである。 1.陽子衝撃による希土類元素Lγ線測定: (1)2-9MeVの陽子をGd、Tb、Dy標的に衝撃させ、回折結晶と位置感応型比例計数管(PSPC)からなる分光スペクトロメータにより希土類元素Lγ線の高分解能測定を行った。4f電子状態に敏感なLγ線Spectrum Profileを利用して、荷電粒子衝撃の特徴の1つである原子の反跳効果が4f電子系に与える影響を見いだすことを主眼とした。Lγ_5、Lγ_1、Lγ_<2,3>、Lγ_<4,4>線を詳細に観測したが、X線、電子線励起との差異は実験装置のエネルギー分解能(約11 eV FWHM)範囲では見いだすことが出来なかった。 (2)原子衝突の側面から理論的考察を進めた。Geometrical Modelに基づいた多重電離確率、Statistioal Energy Deposition-Local Density Approximation法による標的原子への平均エネルギー付与、そのエネルギーストラッグリング、Kinematicsに基づく反跳エネルギー、反跳距離等を計算した。その結果2-9MeVの陽子衝撃では、反跳効果による4f電子系への摂動は小さく本研究で得られた実験結果を説明した。しかし、1MeV以下の陽子衝撃では、本研究の手法により反跳効果を捕らえる可能性があると考えられる。今後この方向での実験を行い明確にする予定である。 2.位置感応型比例計数管(PSPC)の基礎特性調査: (1)X線検出効率を向上させるため入射窓部分を改良したPSPCを新しく製作した。本PSPCの基礎特性調査を行う過程で、熱中性子による(n,α)反応によるα線に対して位置ピークが分裂する現象を発見した。これは本研究遂行上、位置(エネルギー)分解能劣化の要因となるため、精力的に機構解明に取り組んだ。種々のデータを集積し特性調査を進め、位置ピーク分裂の発現機構に関するこれまでに得られた知見を論文発表した。
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