研究概要 |
臭い識別センサの実現を目的として,種々の臭い分子とガスセンサとの反応過程のシミュレーションを行い,実験結果との比較を行ってきた。対象とした臭いは蟻酸(HCOOH)や酢酸(CH_3COOH)等のカルボン酸分子,メタノールやエタノール等のアルコール系分子,そしてメチルアミンやエチルアミン等のアミン系分子である。MOPAC97を用いた分子軌道計算により,これらの臭い分子をSnO_2クラスターに近づけた際の全体の生成熱やクラスター表面の電荷の様子を観察した。生成熱の変化から酢酸分子はセンサ表面から約5Åと,アルコールやアミン系の分子よりも近い位置で吸着されることを明らかにした。実験的に求めたガスセンサの酢酸に対する感度は,アミン系のガスよりも高くなっており,センサ表面での分子の吸着距離がセンサ感度に影響していることが示唆された。 またガスセンサに内蔵されたヒーターに印加する電圧を変調した際のガスセンサの応答の違いからガスの種類の識別を試みた。ガスセンサのヒーターを三角波入力で変調した際のセンサのアルコールに対する応答を調べた結果,アルコールの種類によって応答が異なることを見出した。応答の遅れ時間に注目すると,立ち上がり速度が43[mV/sec]の三角波入力の際にアルコールの種類による遅れ時間の違いが最も大きくなり,この応答時間の差を利用してメタノール,エタノール,プロパノール,ブタノールの4種類のアルコールの識別が可能なことを示した。
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