研究概要 |
1.圧縮性/非圧縮性流れの統一解法に,計算を移流過程と非移流過程の2段階に分けて行う分離解法を採用し,解法の要である移流過程の計算方法,すなわち移流方程式の数値解法について検討を行った.計算時間が比較的短い,プログラミングが容易である,陽的解法である,という長所から,特性曲線法を採用することにした.過去の研究により,特性曲線法の中で行われる補間計算のための補間式に未知関数の節点値のみで構成される2次多項式を使った場合,かなりの人工粘性が混入し,衝撃波のような不連続部分を伴う計算では,不連続部分の解がだらけてしまうことがわかった.そこで,本研究では,未知関数の節点値に加えて,未知関数の空間変数に関する偏導関数値も含む3次多項式を補間式に採用することとし,その偏導関数値の求め方を検討した.二つの方法を検討し,以下の結果を得た. (1)最初に,関数値を計算するアルゴリズムを解読して偏導関数値を計算するプログラムを自動生成する,アルゴリズムの自動微分と呼ばれる手法を調べた.その結果,問題の境界条件がディリクレ型で,しかも指定される関数値が0の場合には良好な結果を与えるが,境界で指定される関数値が非零の場合やノイマン型境界条件が指定される場合には境界付近での偏導関数値の精度が著しく低下し,移流計算の精度も低下する結果となった.自動微分を移流方程式の数値解法に応用するためには,境界条件の存在を考慮した自動微分法が必要である. (2)次に,原方程式を空間変数で偏微分して,未知量の1階の空間偏導関数を未知量とする方程式を導き,それを解いて偏導関数値を求める方法を調べた.調査の対象として,CIVA法を取り上げた.その結果,2次元移流問題のベンチマーク問題の計算において,CIVA法は良好な結果を与えた.しかし,CIVA法による解はかなりの数値振動を伴っており,使用に当たってはリミッターの併用が避けられないことがわかった. 2.移流過程の計算にCIVA法を応用し,非移流過程の計算にBercovier-Pironneau要素に基づくガラーキン有限要素法を用いる統一解法を構築した.圧縮性流れの例題として衝撃波管内の流れを,非圧縮性流れの例題として直管内のポアズイユ流れを解いた.理論値に近い数値解を得ることができ,圧縮性流れと非圧縮性流れの両方を計算できる方法を構築することができた.しかし,計算精度に関してはさらなる検討の余地が残る.衝撃波管内の流れの計算値は,補間関数に2次多項式を使った場合とほとんど同じであり,同程度の人工粘性が混入した.今回の計算結果を見る限りでは,3次多項式を使って補間計算を行った効果は現れなかった.
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