研究概要 |
独自の集中質量型プローブを用いた安定なナノ分解能高感度弾性マッピング(弾性分布の画像化)を実現するため,動作不安定要因の抽出,改善を行った。また弾性の定量評価も検討した。主な結果を以下にまとめる。 1.プローブの振幅スペクトルにおける寄生共振ピークは,加振用ピエゾ(圧電セラミックス)固有の特性により生じている。また,弾性マッピングにおけるスペクトルの予備計測の際には,プローブのねじり共振および加振用ピエゾの特性がスペクトル計測に影響を与えないように,加振力を十分小さくして計測する必要がある。また,探針接触時においても多数ピークが出現するが,理論通り接触力の変化に敏感な共振ピークに注目すべきである。 2.探針先端形状が磨耗等の損傷により容易に変化しないようにコーティング材の選択は重要である。14年度まではコーティング材としてW_2Cを用いていた。これは良好な耐磨耗性を有しているが,探針母材のシリコンとの接合強度が弱く,容易に剥がれ落ちてしまう。15年度では代替品としてTi/Ptコーティング探針を採用した。これによりコーティング剥離の発生し難くなり長時間に渡り安定な接触共振が得られた。 3.結晶面が互いに異なる2種類のシリコンウエハの表面をKOH溶液でエッチングした表面およびダイヤモンドを標準表面として用いて,弾性係数の評価精度を調べる方法を考案した。 4.探針先端をあえて潰し,先端を平坦状にした探針を新たに導入し,弾性係数の定量評価を格段に簡単化した。これは接触面積が付着力,接触力に依存しないという平坦探針特有の性質による。 5.ハードディスクの磁性膜表面,PZT薄膜表面,Ti箔表面について,鮮明な弾性分布画像を取得することができた。弾性分布の画像では,表面形状には現れない組織,材質等の場所的な違いを反映した表面性状を数十ナノメートルの分解能でみることができた。
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