研究概要 |
平成14,15年度にわたり表題の研究を行い以下のような結果を得ることができた. 表面ひずみによる表面応力の変動はかなり小さく,解析結果に大きい影響は与えないと考えられる.そこで,表面応力を境界条件に考慮した解析方法を様々な表面現象の解析に適用するための基礎的研究を行った。 1.表面応力がステップ状に変化する表面の変位を異方性弾性論により解析し,簡単な表示式を導出することができた.この関係式をもとに,Si表面をAs, Geなどの異原子で覆った場合に表面近傍のSi原子の原子間距離が変化すること,その変化した原子間距離が表面応力の差{Siの表面応力-(異原子とSi間の表面応力)}で計算できることを示した.これらの表面応力は第一原理計算で得られた値を使っている. 2.表面応力を考慮した2物体間の凝着に関する応力解析を行った。凝着を起こすと,その周囲の部分の表面エネルギより凝着した部分の表面エネルギが低下する。そのために低下した領域の縁にプリズマティック転位ループが発生する。これが凝着力の一部を形成する。さらに,表面エネルギを導入することにより2物体を引き離すに要する力と変形の関係を調べた。その結果、表面応力を考慮したJRK理論に相当する理論を新たに構築することができた。ここで導出した関係式を用いて球面と平面間の凝着力と凝着半径について実験結果と比較した.マイクロメータサイズの球面については理論と一致することが示せた.しかし,現在のところナノメータサイズの球面については実験が困難であるため,十分な比較を行うことが出来ない.理論的には表面応力の影響はナノメータサイズの球面で現れることから,これについては今後継続的に検討する. 3.表面にステップがある場合の解析において,表面グリーン関数と表面ダイポールの関係が必要であることがわかってきた.そこで,表面応力を考慮した表面グリーン関数の導出を行い,表面ステップ近傍の変形状態を分子動力学の結果と比較し,式の妥当性を検討した.その結果,ナノメータ領域における応力解析に有効であることがわかった.
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