研究概要 |
GFRP積層板の層間はく離検出を目的とし,積層板に埋め込んだコイルと積層板上におかれたコイルとから構成される電磁超音波センサを用いて板波の音速を測定した.渦電流と静磁場の相互作用であるローレンツ力を用いる電磁超音波センサは,材料に非接触で超音波の送受信が行えるため,金属の非破壊検査において従来の圧電センサに代わって用いられつつある.GFRPには導電性がなく渦電流が発生しないため,積層板に埋め込んだコイルを流れる電流を用いた.薄板中を伝ぱする板波の音速が板厚と周波数の積に依存することを利用し,層間はく離による板厚減少を板波の音速変化として検出する手法を提案した. 音速測定には2つの手法を用いた.1つは,送受信センサ間隔を変化させながら受信波形を取り込み,狭帯域パルスの各周波数成分について伝ぱ距離と伝ぱ時間の関係を求め,その傾きの変化としてはく離を検出する群速度法である.測定線上でどの領域がはく離しているかを評価することができる.本研究ではさらにセンサの蛇行コイルの導線間隔が板波の半波長と等しいときに受信信号の振幅が最大となることを利用する位相速度法を提案した.受信センサを狭帯域化することにより受信位置での波長により敏感とし,受信位置でのはく離の有無を評価できる. 試料として積層枚数の異なる4種の一方向積層板を用い,人工はく離を段階的に導入しながら各段階において音速測定を行った。その結果,12層の薄い積層板では群速度法により測定線上でのはく離先端位置を10mm程度の精度で評価でき,32層の厚い積層板では位相速度法により各測定点におけるはく離の有無をほぼ正確に評価できた.
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