研究概要 |
本研究では極異方性を有する木質材料へのコースティックス法の適用を目指し,まず初年度は切欠きを有する試験片に引張負荷または非対称の4点曲げ負荷を与え,モードI,IIおよびIIIの各種負荷モード下におけるコースティック像の大きさと形状より応力拡大係数K値の測定を行い,各種負荷モードが測定精度に及ぼす影響について統一的な視点で実験的に検討を行った.また翌年度は表面反射型コースティックス法を乾燥ヒノキ材に適用し,モードI型負荷における応力拡大係数K_1の実験的決定に関する基礎的な検討を行った.その際,切欠き先端近傍の応力・変位場を三次元有限要素法を用いて解析し,ラグランジュ補間法によりコースティック像の直接シミュレーションを行い,得られた実験像との比較・検討を行った.得られた知見は,以下の5点にまとめられる.1.モードII荷重下の場合,本研究で得られた最小の初期曲線の大きさr_<0,II>^<min>は,試験片板厚の約1/3程度であった.2.3次元有限要素解析によりモードI,IIおよびIII荷重下に対応したコースティック像の直接シミュレーションを行うとともに,その数値解析手法について提示を行った.3.ヒノキ材の板目面,柾目面および木口面の三方向に対して測定時の初期曲線r_0が,本研究で得られた最小の初期曲線の大きさr_0^<min>より大きい範囲において,ほぼ正確な応力拡大係数を測定することができた.4.最小の初期曲線の大きさr_0^<min>は,三方向ともに試験片板厚の半分程度となり,これまでの等方性材料の場合と同様な結果が得られた.5.切欠き先端の面外変位分布は2次元および3次元有限要素解析で違いがみられ,その差違が生じる領域はr_0^<min>の大きさとほぼ一致した.
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