研究概要 |
マイクロ押出加工の実現に際し,最も重要なキーテクノロジーは,工具のトライボ特性を上げるための硬質薄膜の応用である.種々硬質被膜が作られているが,必ずしも塑性成形用工具面への適用に対応したものではない.本研究では,まず実験室トライボメータにて各種被膜のトライボ特性評価を試みた.さらに熱間における特性評価のための試験法の検討を行った.以下に得られた結果をまとめて示す. 1)硬質皮膜ダイスとSKD11ダイスとでは異なる定着形態を示し,SKD11ダイスにおいては摩擦係数μと加工後成形表面粗さに相関性がみられるが,硬質被膜ダイスにおいてはみられない. 2)加工後のダイス表面形状,加工中の摩擦係数μによる各種被膜の性能評価は次のとおりである. ・ダイス表面状;TiCrN, CrN, TiN, TiAlN, DLC-Siの順に付着物量は少なくなっていく.TiNについては,膜の製法による付着物量の違いは見られない.また,DLC-Siでは,付着物は見られないが,クラッカーが確認される. ・摩擦係数;TiN(HCD),TiAlN, TiN(AP), TiCrN, CrN, DLC-Siの順に摩擦係数は小さくなる. 3)母材の硬度が高い程,薄膜硬度も高くなり,実用特性としては良好である.また,耐剥離性も高く微細加工への適用が有望である.多層膜になる程微小な弾性変形に対しても追随し,微細加工用ダイスには適している.DLC-Siは比較的高温でも有効で,マイクロ押出し加工等の微細加工には有望な被膜と考えられる.
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