研究概要 |
ダイヤモンドを工具として鉄系材料に対して切削加工を施すと,ダイヤモンドが著しく摩耗してしまう現象は良く知られている.本研究は,この現象を逆に利用して,ダイヤモンドに3次元マイクロ加工を行う方法を開発することを目的としている.旋盤チャックに炭素鋼の丸棒を取り付け,工具台にダイヤモンドを取り付ける,丸棒の表面には,雄ネジ形状が施してある.送り量をねじのピッチと同じ値にして外周切削を行うことにより,ダイヤモンドの特定の部分でネジ山を切削する.この加工により,ダイヤモンドの逃げ面に相当する面が摩耗し,ダイヤモンドに雄ネジ形状を転写することができる.この方法でダイヤモンドの加工を行い,以下の成果を得た. 1.いずれの結晶面方位においても,30秒手鏡の加工時間で,切削加工における切込み方向について.ダイヤモンドを0.1mm以上,加工することができた. 2.加工除去量は(1,1,0)面で最も大きく,(1,1,1)面で最も小さい. 3.ダイヤモンドの除去は,ダイヤモンドの黒鉛化によるものと考えられ,切削温度,すなわち加工点の温度が除去量に大きく影響する. 4.本加工方法は,加工仕上げ面性状の点で,レーザー加工より優れており,除去量の点においては,鉄系材料とダイヤモンドの化学的親和性を利用した他の方法よりも優れている.このように,本加工方法の有用性を示すことができた. 5.加工中にダイヤモンドに作用する切削抵抗,加工点近傍の温度変化,ダイヤモンドと鉄系材料の除去量を調べて,どのように加工が進展していくかを検討した.
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