研究概要 |
交流電界を印加して微細な汚染物を凝集・粗大化させる凝集部を前段部に配し,直流電界を印加して汚染物を捕捉する捕捉部を後段部に配した構造の静電フィルタを試作した.試作した静電フィルタは円筒型が2種類,直方体型が1種類の計3種類である.円筒型では外周部に凝集部を配置し,内部を捕捉部とした.フィルタ性能に及ぼす凝集部における流れの速度勾配の影響をモデル機で確かめるため,凝集部における流れの向きが軸方向のものと周方向のものを製作した.供給流量6cm^3/sのとき軸方向型で1.5s^<-1>,周方向型で4.7s^<-1>であり,後者の場合は凝集が進行しやすい速度勾配の範囲(約2〜8s^<-1>)に入っている.捕捉部は外側からアース電極、コレクタ,高電圧電極,コレクタ,アース電極という配置とし,汚染物の帯電極性に関係なく,コレクタや電極の上流側表面で捕捉できるようにした.コレクタは再利用性を考慮して,ステンレスメッシュで構成し,コレクタ部の電極表面にもステンレスメッシュを被覆した.直方体型は,フィルタ性能に及ぼす捕捉部の電極やコレクタの配置などの影響を調べるために製作した.実験には市販の鉱物油にJIS試験用粉体を混ぜた模擬汚染油と,製造工場で使用されていた潤滑油の使用済み油を用いて行った.本研究により,以下の結果を得た.(1)凝集部に交流電界を印加した場合は印加しない場合に比べてろ過速度が約2倍になり,本研究で提案する方式の静電フィルタの有効性を実証することができた.しかし,さらに改良していく必要がある.(2)軸方向型よりも周方向型のほうがろ過性能は良く,凝集部における速度勾配の値が凝集に適した範囲に入っていることが重要であることが実機により確かめられた.(3)直方体型静電フィルタを用いて行った実験により,コレクタ部の形状を工夫することでろ過性能がさらに向上できることが示された.
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