研究概要 |
表面改質皮膜の高機能化のための方法として微細粒子分散に着目し,粒子分散複合めっき,微細析出物分散,およびセラミックス粒子溶射を取り上げ,改質皮膜のトライボロジー挙動に及ぼす分散粒子の影響を実験および解析により検討した.更に,粒子分散複合表面改質を高真空下で使用する歯車への適用を試みた.これらの実験,検討結果を要約すると次のとおりである. 1.低摩擦性を有す微細粒子を分散した複合表面改質層の摩擦・摩耗特性を10^<-4>Paオーダーの高真空無潤滑下でローラ試験およびリング・ディスク試験により調べた.粒子分散複合表面改質層内の最大応力は粒子周りに発生し,粒子径よりも粒子含有量の影響が大きい.粒子分散複合表面改質層の摩耗挙動は改質層内の応力で説明された. 2.アルミナセラミックス粒子を溶射したローラの転がり疲れ強さを油潤滑下で調べ,損傷形態と表面下の応力との関係を考察した.観察されたスポーリングき裂の発生深さは計算されたせん断応力が最大となる深さとほぼ一致した. 3.潤滑性を有す微細析出物を分散したステンレス鋼の摩擦・摩耗特性を大気中無潤滑下,真空中無潤滑下および油潤滑下で従来鋼SUS420J2ステンレス鋼と比較した.いずれの環境下においても,潤滑性を有す析出物を分散させることでステンレス鋼の摩擦・摩耗特性は改善できた. 4.粒子分散複合めっきについて,10^<-4>Paオーダーの高真空無潤滑下で二円筒試験および歯車試験を行った.PTFE粒子を分散した場合,歯車試験では摩擦,摩耗および歯形誤差のいずれもめっき歯車中最も小さく,各かみあい位置の摩耗がほぼ均一であり,歯面動荷重も小さかった.かみ合い位置により面圧や滑り速度が大きく変化する歯車特有の摩耗挙動により歯車試験の摩耗は二円筒試験より極めて大きかったが,両試験の平均摩擦にはよい相関があった. 得られた結果は,表面改質皮膜の最適厚さや最適粒子分散設計に有用である.
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