研究概要 |
軟X線によるPTFEの内殻電子励起反応による効果を利用して,以下の2点を目的として行った. (1)マイクロマシニングにおいて,軟X線によるPTFEのドライエッチングを利用したマイクロ3次元構造体作成のための基礎研究を行う. (2)軟X線を用いて新規な物性を持つPTFE表面を創出し,新たな用途の拡大に貢献する. 得られた研究成果を要約する: 放射光を用いたPTFEのマイクロ3次元加工について述べた.NewSUBARU BL6では,AURORAでの研究報告とは異なり,放射光照射時に基板の加熱をともなうことでPTFEのエッチング速度は指数関数的に増加することを報告した.また,加熱をともなう照射の場合,加工側面は高精度が出て摺動部用の微小部品として適していること,および照射面は粗さがでるため表面の精度を要求する場合には適さないものの,マイクロパーツの局所的な表面改質によるぬれ性,および表面エネルギーの変化による接着性の制御が可能であると考えられる. PTFEに軟X線を照射する際基板温度およびDOSE量を調節することで表面組成および表面形状を変化させ,表面のぬれ性を親水性〜超はっ水性まで制御することが可能であることを示した.また,表面の微細凹凸構造および固液界面の空気層がぬれ性に及ぼす影響について考察し,空気層のできるメカニズムを考察した.さらにCassieの式を用いて,本研究で作成した超はっ水性の改質PTFEについて,水滴との界面における空気層の面積分率を推定した. また,室温下での軟X線照射により表面組成が変化することにより,ぬれ性の向上,摩擦係数の増加,耐摩耗性の悪化が起こることを示した. 最後に,放射光施設を利用した軟X線によるPTFEの表面改質,微小3次元パターンの形成は,現状では光の照射面積に限度があることから大きなスケールでは不可能であるが,微小なスケールでは大変有効な成果があげられると考える.例えばぬれ性(すなわち接着性)の微小パターンの形成や,マイクロパーツの局所的な表面改質には貢献できるものと考える.
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