研究概要 |
浸炭用鋼SCM415H及び窒化用鋼SACM645にプラズマ浸炭処理,ラジカル窒化処理及びプラズマ窒化処理を施した平歯車のスコーリング強さを明らかにすることを目的として,動力循環式歯車試験を使用してスコーリング試験を行った。また,硬化処理層の摩擦摩耗特性及び焼付き強さを明らかにするために,アムスラー摩擦試験機を使用して二円筒試験を行った。さらに,三次元熱流の場合の楕円状分布移動熱源による瞬間温度瞬上昇式を誘導し,接触面温度の観点から検討を行った。その結果,以下ことが明らかになった。 1.SCM415H製歯車については,ガス浸炭処理を施した歯車対の場合には,歯面荷重P_n=364N/mmでスコーリングが発生したのに対して,プラズマ浸炭処理を施した歯車対では,最終試験段階のP_n=785N/mmにおいてスコーリングが発生し,スコーリング強さは歯面荷重で約2.2倍に向上する。また,SACM645製歯車については,プラズマ窒化処理を施した歯車対とラジカル窒化処理を施した歯車対の場合には,それぞれP_n=721N/mm, P_n=657N/mmでスコーリングが発生した。 2.プラズマ浸炭処理,ラジカル窒化処理及びプラズマ窒化処理を施した歯車対の場合のスコーリング臨界温度は,ガス浸炭処理を施した歯車対の場合のそれに比べて,約130℃〜150℃高く現れる。 3.二円筒試験において,プラズマ浸炭処理を施した試験円筒とガス浸炭処理を施した試験円筒の場合には,焼付き発生直前の摩擦係数の値はほぼ0.08から0.09となる。一方,ラジカル窒化処理とプラズマ窒化処理を施した場合には,焼付き発生直前の摩擦係数μは,ほぼ0.06から0.08となり,試験開始直後と比して,摩擦係数の低下の割合が大きい。
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