研究概要 |
本研究においては,密度成層効果を考慮するために擬似圧縮性ナビェ・ストークス方程式を用いる手法と圧縮性ナビェ・ストークス方程式を用いる手法を比較検討した結果,より直接的に密度変動効果を取り込むために圧縮性ナビェ・ストークス方程式を用いる手法を採用することにした.この場合,圧縮性ナビェ・ストークス方程式を低マッハ数で解く必要がある.圧縮性ナビェ・ストークス方程式を低マッハ数で解く場合に硬直性及び高レイノルズ数における不安定性を回避することが不可欠の条件となる.前者に関してはマッハ数を0.01程度に設定することにより時間追従性を確保することが可能であることを明らかにし,後者に関しては移流項をセル中心で離散化し,元の定義点に補間する流束シフトの考え方を適用することにより数値解のクオリティを損なうことなしに非物理的振動を抑えることができることを示した.2次元問題に対して,非圧縮性流体解析コードによる結果と比較した結果,マッハ数を0.01程度に設定することにより非圧縮性数値解と遜色の無い結果を得ることに成功した. この低マッハ数型圧縮性ナビェ・ストークスコードに密度成層効果を組み込んだ基礎的環境シミュレーションを実施し,密度成層効果のない場合の数値解と比較検討を行った結果,山や建造物等の物体後方に形成される渦構造が変化することを確認することができた.また,密度成層効果のほかに重力の効果についても検証を行った.その結果,本研究で開発したシミュレーションコードは密度成層効果のみならず重力の効果も的確に数値解に反映することが可能であることを示すことができ,本手法が大気予測シミュレーション等に有効であるとの結論を得た.
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