研究概要 |
遠心型や軸流型の気体機械について,羽根車-回転軸系に現れる幾つかの非定常流体現象の中で,(1)軸受隙間流れ部に発生するTaylor渦の非定常挙動,(2)遠心圧縮機および送風機に発生する流体騒音とその音源領域分岐,(3)軸流型圧縮機の旋回失速パターンとセルの分岐現象,の3点に研究の焦点を絞り,数値的および実験的研究を行った.具体的な内容は以下の通りである. (1)偏心率の大きい二重円筒間流れで発生するテイラー渦の非定常挙動を把握するため,3次元N-S方程式を用いた数値解析を実施した.本年度は,新たに移動座標系を採用することで中心軸が振れ回り運動する場合に対処できる計算コードを構築した.また,エネルギ式を連立して解くことにより,非定常温度場の把握が可能になり,粘性散逸によって発生した損失熱を効率的に冷却する試みについても数値的に検討した.さらに,数値解析結果の妥当性を検討する目的で,新たに実験装置を自主設計・製作して基本性能実験を行った. (2)遠心機械の運転条件(回転数および流量)を種々に変化させた場合における騒音特性と騒音源の移動・分岐現象を調査するために,舌部近傍壁面での圧力変動と外部騒音圧との相関解析により,音源の定量的分布傾向を調査した.特に高次騒音成分の音源領域は,運転条件の変化に対して不規則な移動や分岐を示すことが明らかになった.また,この現象を詳細に把握することを目的として,従来から構築中であった数値解析モデルに代数乱流モデルを導入し,流れ構造のより詳細な調査を可能とした. (3)軸流圧縮機の旋回失速現象に関しても,失速突入過程の詳細な実験を通して,複数のセル分岐パターンを把握することができた.本年度の特徴は翼列を3段まで拡張した点であり,従来の単段機では起り得なかった複雑な失速パターンを観察し,その予兆現象を捉えることで失速を能動的に制御する技術についても合わせて検討を行った.
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