研究概要 |
本研究は,一様流中に置かれた実用翼型翼から生じる離散周波数騒音の発生機構を解明し,その騒音制御法に関する知見を得ることを目的とし,翼周りに発生し得る規則的変動流れとして,(a)翼面境界層の乱流遷移流れ,(b)境界層の局所的はく離に起因する乱流組織流れ,(c)後方領域に形成される乱流後流中の大規模組織構造の三つの組織性変動流れに着目した実験研究を行った.主たる実験として翼近傍および後流域の流れ場の詳細を計測し,周波数領域での分析に加え,発生する騒音信号を基準信号とする位相平均法を用いて分析し,離散周数騒音の発生の原因となる組織性変動流れの特定を行った.得られた結果を要約すると以下のようになる. (1)離散周波数騒音が発生する場合,翼面には明瞭な流れのはく離はなく,はく離に起因する局所的な組織流れも生じていない.また,後流域にも離散周波数騒音の原因となる組織流れは形成されていない. (2)離散周波数騒音が発生する場合,いずれも翼圧力面の後縁近傍において境界層が乱流遷移し,後縁近傍の境界層内には発生騒音と強い相関をもつ周期性速度変動が生じている. (3)位相平均法によって得られた翼面境界層内の非定常速度場より,圧力面側後縁近傍での乱流遷移に起因する組織性変動流れの詳細を解明し,組織渦列の後縁近傍の挙動を明らかにした.これらの組織渦の形態,内部構造等は翼型,迎え角,流速等によらず,共通の特性を有している.
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