研究概要 |
半導体レーザを利用した赤外線吸収スペクトル測定法は簡便で応用性の高い気体の温度・濃度計測法として期待されている.この測定法の特徴は温度・濃度の同時連続的測定が可能であり,複数の波長の光源を用いることで多種化学種濃度測定も可能であることである.本研究では吸収体として水蒸気を用いて高温条件下での吸収スペクトルおよび、吸収線の組み合わせによる特性について検討を行い,選出した吸収スペクトルを用いて高温条件下での気体温度測定法を開発することを目的とする.得られた結果をまとめると以下のようになる. (1)高温測定に利用する吸収スペクトルおよび,吸収線の組み合わせとしての特性を検討した.その結果として以下の項目に着目して測定波長の選定を行った.(1)両者の遷移前のエネルギ差が大きい組み合わせであること,(2)高温時でも吸収線強度が大きい吸収線であること,(3)参照温度において,中心にある吸収線の吸収線強度は大きく,両者の吸収線強度の比も大きい組み合わせであること,(4)周りの吸収線の影響をあまり受けない吸収線であること. (2)2台の半導体レーザを使用し,半導体レーザ波長走査により水蒸気の赤外線吸収スペクトルを1350Kから1800K付近の火炎温度で測定を行った.(3)測定された吸収スペクトルは吸収係数データベースに基づく計算結果とほぼ一致しているが,詳細には大きさや形,吸収線強度の温度に対する変化に違いがある個所が認められた.(4)実測した吸収スペクトルから得られた線強度比は,吸収係数データベースによる計算結果と対応する傾向をもつことが分かった。しかし,1600K以上の高温域ではばらつきが大きく見られた.この原因としては高温度域では吸収係数が小さくなり,受光信号のS/N比が低下すること,また強度比の感度が低下することが考えられる.
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