研究概要 |
実用燃焼器内に形成される乱流予混合火炎は乱流場に含まれる様々な渦や浮力の影響によって,曲率の変化を伴いながら変動している.乱流予混合火炎の局所的挙動を明らかにする際に,回転流を伴う火炎の動的挙動とその機構を明らかにすることは重要である.本研究では回転ブンゼン火炎先端部を対象に,慣性力,浮力,ルイス数効果が連成した火炎の動的挙動とその機構に関して実験的に検討を加えた. ルイス数Le>1の条件で,スワール数Sを増加させると,火炎先端部が曲率変化を伴って振動する周期振動火炎(S=1.04)が円錐火炎(S=0)から円錐台火炎(S=1.58)への移行する過程で形成された.周期振動火炎の振動機構の詳細を明らかにするために,振動の周波数及び振幅について検討を加えた.その結果,周波数はSの増加に伴って減少したが,これは遠心力の増加による軸方向流速の低下に起因する.振幅に関しては,周期振動火炎の形成に伴って非回転時の約5倍に増幅し,円錐台火炎の形成に伴って減衰した.この増幅はルイス数効果による燃焼強度の変動に起因することが示された.すなわち,振動を誘起させる浮力とルイス数効果による燃焼強度の変動が互いに融合した結果,周期振動火炎が形成されることが明らかとなった. Le>1の条件下でかつスワール数を一定に保ちながら(S=1.04),予混合気流の断面平均速度と周速度による慣性力を増加させると,周期振動火炎の挙動は周期運動から準周期運動を経て,カオス性を示唆する振動へ遷移していくことが明らかにされた.それぞれの火炎挙動に対する定性的な評価は,アトラクタの幾何形状によって評価することができ,定量化な評価は相関次元法によって得られた次元値から評価することができた.このことは,本研究で適用した時系列カオス解析が,非定常火炎の挙動を評価する際の指標の一つとしても有効な手法であることが示された.
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