研究概要 |
近年,ヘリコプタはその優れた機動性が注目を集め,防災や緊急救助等,その用途は急速に広がっている.一般にはヘリコプタは振動レベルが大きく,機体構造の疲労問題なども引き起こしやすい.とくに,ヘリコプタのブレードはメイン・ロータの振動や空気力に起因する外力によりさまざまな様式で励振されて大きく振動する可能性がある.その主なものが,空気力によるロータ回転数の整数倍の周波数成分を含む外力であり,この外力はヘリコプタの振動の主な原因となっている. 現在,ブレードの防振装置の一つとして,振子式動吸振器が用いられている.振子式動吸振器の寸法は線形理論の反共振点の利用を考えて定められている.しかし,その特性に関する詳しい解析,とくに非線形性まで考慮した解析はほとんどない. 本研究ではブレードと振子式動吸振器を2自由度振動系でモデル化し,メイン・ロータの回転速度の整数倍の変位加振に対する振子式動吸振器の制振効果を,非線形性までを考慮に入れたシミュレーションおよび理論解析,さらに実験により検討した結果,以下のことが明らかとなった. 1.振子式動吸振器は,振子の固有振動数を加振周波数に同調させることにより,広い回転速度範囲で制振効果を示す. 2.加振振幅が大きくなると,振子の振れ角が大きくなり,制振効果が減少する.さらに大きくなると,振子が回転するようになり,制振効果が失われる. 3.振子の取り付け位置,振子とブレードの質量比,振子の減衰係数などの影響を明らかにした. 4.振子を取り付けることによる非線形分岐現象の発生を確認した. 5.加振周波数よりも若干低い周波数に振子を同調させることにより,さらに高い制振効果が得られることを明らかにした.
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