研究概要 |
本研究では人間-機械とのインタラクション解析に基づく共適応型人工物設計に関する研究を遂行した.その趣旨は,インタラクションを通して生成されたり消滅したりする関係生成のダイナミクスを十分に考慮した組織的視点に立つ設計論の確立である.そこでは人間ユーザの位置づけとして,従来のようにシステムの挙動を監視するだけといった受動的・固定的な役割の割当ではなく,人間が本来有する能動的な主体性や系への参画意識を誘発し,人間の行動多様性を抑制するのではなく許容していく中で学習・習熟を可能にし,作業環境や他者との関係生成をより活発なものにしていくための共適応機能を有する人工物のデザイン原理について究明を試みた. 本研究の成果は,ロボットに代表される複雑環境に適応する自律行動機械の設計や,ユーザの製品利用状況を検証するためのユーザビリティ・テストやユーザビリティ設計の手法としてのみならず,本来固有の自律機能を有する人間とロボットやエージェントのような異種の行動主体・判断主体が共存する場でのインタフェース論・関係論へと発展できるものと考えている.また技術主導で進められてきたさまざまな高度自動化の負の効用が問題にされている今日,人間操作者との円滑で安全な協調を保証できる人間-自動化共存系の設計原理として寄与するところも大きいと考える.
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