研究概要 |
1.聴覚情報(声)による人物同定に関する神経システムを研究するために,機能的MRIを用いて脳の賦活領域を調べた.実験結果から,知らないヒトの声に対し,親しいヒトの声に対する反応は側頭極(BA38),上側頭回(BA22/39),帯状回GC後部(BA23/29),及び前頭葉内側面(BA10)では強い反応が見られる. 2.人間の顔などのパターン認識において,主観輪郭線などの錯視特性は深く関係していると言われている.本研究では,非対称な図形の主観輪郭知覚特性を定量的に研究し,その特性の数理モデルを提案した. 3.身振り特性を検討するため,実験装置を作成し,全身協応運動を用いた課題における予測時間と動作時間の関係を明らかにした.実験結果によって,(1)動作時間は視覚情報の影響を受けていない,(2)自己の動作時間と予測時間との関係は予測時間のほうが小さく見積られている,(3)予測時間は視標速度からの依存性の影響を受けておらず、視標速度の減少に伴って予測時間が増加することなどのことはわかった. 4.視覚,聴覚および触覚の脳高次機能のfMRI実験を実施するため,開発した高磁場環境下における実験装置を用いて,触覚長さ知覚の認知とfMRI実験を実施した.実験結果から,触覚長さ認知は,高次視覚情報処理領域と言語情報処理領域に深く関係していることが判明した.これらの結果は,人間の触覚情報処理と人物同定メカニズムの解明に有効な基礎データを提供し,下記の仮説を確認できた.1)人間は触覚による長さ認知の際に,触覚心内表象(Tactile mental image)を用いて対象物体を視覚的に捉えている,2)触覚による長さ認知には言語的判断が伴う(言語情報処理領域と関係する),3)触覚のみによる長さ認知であるため,手指に注意を集中し,繰り返し判断が行われる.
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