研究概要 |
振動ピンアレイを用いて皮膚表面に刺激を与え人工的に触覚を生成する振動ピン刺激法に関する基礎データを得るため,ピンの振幅とピン配置を所望値に設定可能な刺激生成装置を製作し,振動振幅に対する感覚尺度の構成,2点弁別閾計測,仮現運動特性,感覚像特性の計測を実施した.右手示指末節(先端より4分の1の地点)を対象部位とし,直径0.5mmの単ピンで刺激を与える条件を用いた.振動受容器であるマイスナー小体とパチニ小体の特性周波数付近である50Hz,250Hzにおいて,25μm以下の振幅範囲でそれぞれ,5.3レベル,15.6レベルの感覚強度レベル,および絶対閾として8.17μm,1.66μmの結果を得た.刺激周波数の増加により,感覚強度レベル数は増加,絶対閾は低下した.惹起される触感覚の印象について,粗さと明瞭度の観点からグラフ尺度による評定を行った結果,粗さは周波数の低下と振幅の増大により増加し,明瞭さは,振動周波数の上昇に伴って増加し,また振幅の増大において増加傾向にあった.これらのことから,振動刺激の触覚感受性を考慮すると,単一周波数において提示を行う場合は,絶対閾が小さく感覚強度レベル数が大きい250Hz-350Hzにおける駆動が適切であると判断される.更に,複数振動ピンによる触覚像提示においては,ピンの空間密度が重要であるため,振動刺激下での2点弁別閾を同様の部位で計測した結果,250Hzにおいて2.35mmと最小値をとることが明らかとなった.マイスナー小体の特性周波数でなくパチニ小体の特性周波数となっているため,振動伝播による像の収束度が原因と予想したが,振動伝播強度の計測の結果では,250Hzが最大領域に伝播していた.これにより,パチニ小体は受容器密度は低いが空間定位特性が優れることが明らかとなった.更に,これらの結果を触覚ディスプレイの制御に反映させることができた.
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