研究概要 |
ロボットやマニピュレータの動作が環境との衝突や相互作用を伴うとき,駆動系の損傷や環境に及ぼすダメージが問題となる.本研究では,ステッピングモータ駆動系が本質的に持つに受動性に注目し,負荷端の受動的柔らかさを有効に発揮させる制御手法の提案とその特性の検証を行った. (1)ソフトアクチュエーション ステッピングモータの駆動電流を制御して脱調閾値を変化させ,脱調によるトルク喪失により負荷端の受動的柔らかさを創出する手法であり,著者らが提案したステッピングモータ駆動法である.ソフトアクチュエーションを適用することで,ステッピングモータの持つ受動性を有効に用いることができる.例えば,ロボットアームにより落下物体の柔らかな受け止めができることを実験的に示した. (2)ステッピングモータのトルク指令駆動 ソフトアクチュエーションのもとで,ステッピングモータのトルク角を制御することにより,開ループでステッピングモータをトルク指令駆動する手法を提案し,トルク指令に沿った駆動トルクを生成できることを実験的に示した.この結果,ステッピングモータの作用をトルクとして運動方程式中に直接記述することができ,すでに知られているさまざまな運動制御手法をステッピングモータ駆動系に適用できることになる. (3)マニピュレータを用いた駆動特性の検証 1)ソフトアクチュユーションのもとでトルク指令駆動法により,良好な位置・速度の追従制御性が得られた. 2)受動的柔らかさを用いて,高さの事前情報なしにマニピュレータによる物体の把持・積上げが実現できた. 3)受動的柔らかさにより,障害物との衝突衝撃を緩和でき,手探り動作による障害物の回避行動が実現できた. 4)受動的柔らかさにより,明示的な力制御/コンプライアンス制御を行うことなくペグインホール動作ができた. 柔らかさと制御性は,一般に相反する要求であるが,提案手法によりステッピングモータ駆動系に位置・速度の制御性を大きく損なうことなく,負荷端から見た受動的柔らかさを実装できることが示された.
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