研究概要 |
本研究では,インバータの1相が故障した場合において応急運転が可能な誘導電動機駆動用インバータの制御方式の確立を目的として検討を行ない,以下の成果を得た。 1.試作装置を製作し,出力2相と直流側中性点の3端子を誘導機に接続し,二相3線式による応急運転を行ない,回転磁界の発生が可能で基本的に運転継続できることを確認した。 2.二相3線式駆動では,直流中性点から故障相の電流を取り出しているため,直流中性点電位が変動し出力電流波形が大きく乱れる問題がある。この対策として,直流中性点電位の変動分をPWM指令値に足し込む制御方法と,この方法で問題となる中性点電位の不安定現象の対策をも提案し,それらの有効性を示した。 3.二相3線式駆動法では,デッドタイムの影響により出力が不平衡となる特徴的な問題がある。この不平衡現象の発生機構を理論的に明らかにするとともに,直流中性点電圧の検出値から電流の方向を推定してデッドタイムの影響を補正する方法を提案し,電動機の脈動トルクが大幅に減少することを実験的に確認した。 4.応急運転に移行する前の,故障状態におけるインバータ電流の増加について検証実験を行ない,通常のインバータの過電流耐量を考慮すると,故障が他相へ波及しないで収まり,提案する応急運転が可能である見通しを得た。 5.故障素子の判定法として,出力の2相の電流の差分3組を演算し,これらを比較する方式を検討した。出力電流を直接比較する場合に比べ,故障状態の判定が確実になることを理論的に明らかにするとともに,実験装置の電流波形を用いて,実際に判定が可能であることを実証した。 以上の成果により,本研究で提案するインバータ故障時の応急運転法の基本的な有効性を確認するとともに,提案方式の適用の前提条件の妥当性についても見通しが得られた。なお,本制御方式の基本部分について,特許を出願中である。
|